島尾敏雄(1981)『死の棘』新潮文庫

<あらすじ>

夫トシオの長年の浮気に妻ミホはキレる。トシオは浮気をやめるが妻は繰り返し何度も何度も問いただし責め続ける。夫婦喧嘩の日々。互いに喧嘩の時は狂気じみてくる。精神の病の疑いで妻を入院させる。しかし病気だと確定できなかったので退院。家族で引越し。そこに浮気相手が現れる。ミホは女をボコボコにする。夫も加勢する。警察に呼び出されるが大事には至らず。また引越し。ミホは別の病院に入院。

 

<感想>

「あの時あなたは何をしたの、どんな気持ちだったの」、プレゼントしたパンティーの色、セックスしたとき相手を気持ちよくさせたのか、お金を渡して子供を堕ろさせた事etc。くり返し疑問がわいてきて不安になり、好きな夫のすべてを知りたくて問いただすことをずっとやめられない妻の気持ちはなんとなくわかる気がした。夫は反省してもう浮気してないからいいだろうというスタンスだからなあ。少しずつ歩み寄ってる感はあるけれども。不器用ながらも愛を確かめ合ってる仲良し夫婦とその家族のお話ていう気もしました。

 息子の伸一と娘のマヤが健気で可愛くてかわいそうだった。あと周りの人、特に鈴木さんやK子さんめっちゃ良い人。

ロバート・A・ハインライン(1979)『夏への扉』早川書房(原著は1957)

<あらすじネタバレ>

主人公ダニエル・ブーン・デイヴィス(ダン)、相棒の牡猫ピート。マイルズ・ジェントリイという親友。マイルズは娘の一人ある未亡人と結婚、その妻はまもなく亡くなる。娘の名はリッキィ(フレドリカ)、ピートと仲良しダンが好き。ダン(技師)とマイルズ(経営)は文化女中器(ハイヤード・ガール、家事ロボット)会社を始める。その後、ベル・ダーキンという女が加わる。ダンはベルと婚約、株の一部を譲渡。その後、ダンは2人の策略により会社をクビになり、特許や万能フランクなどを奪われる。

 

ダンは落ち込んで冷凍睡眠しようとするが思い直し、マイルズとベルの所へ車で抗議に行く。その前に株をリッキイ(ガールスカウト中)にアメリカ銀行を仲介させて譲渡する手紙を書いて出す。マイルズとベルは結婚していた。言い争いをし、ダンがベルは詐欺師だというとマイルズは動揺しベルはキレてダンに催眠自白強制剤の注射を打つ。ピートが2人と戦い相手にけがを負わせる。そしてピートは閉まっていたはずの網戸から出ていく。2人は株を奪い返そうと車を探すが見つからない。ダンは注射のせいで冷凍睡眠し1970年から2000年へ。

 

冷凍場で目を覚ます。シュルツ夫人という人から連絡があったと聞かされる。ロボットに会う。自分の作ったものに似てたがアラディン社製。保険会社が倒産していて予定していたお金が入らないままそこを出る。自動車スクラップで働きながら図書館で勉強。アラディンに出かけていって製図機ダンを見せてもらう。自分が作った印象を受ける。製図機ダンの特許の最初日付は1970年。マイルズとベルが文化女中器の経営者ではないことが判明。そして文化女中器に求職に行く。創設者だと知らせると宣伝用に採用される。

 

シュルツ夫人ことベルに会う。マイルズはあれから2年後に死んだこと、リッキィはおばあちゃんの所へ行ったこと、万能フランクが消失して経営がうまくいかず会社を売り渡したこと、マイルズがベルを追い出してリッキイに何もかもあげたことを知る。また別の調査で、ダンがリッキイに渡すはずだった株はハイニックなる人物の所有となっていることが判明。さらにアラディン社の製図機ダンなどの発明者を調べてみるとD・B・デイヴィスと記されていた。新聞の冷凍睡眠からの蘇生告知欄にF・V・ハイニックとあるのを見つけ、ハイニックがリッキイの祖母の名前であることを思い出す。フレドリカ・ヴァージニア・ハイニック=リッキイ。リッキイは祖母が死んだ20年前に冷凍睡眠に入る。ダンは目覚めて出て行ったリッキイを探し見つけるが、彼女が誰かと結婚していると知り諦める。

 

ダンはタイムマシンを開発したトウィッチェルのとこへ行き再び1970年へ。そこでジョンとジェニィのサットン夫妻に会い仲良くなる。未来から持ってきた金属の金を元手に製図機ダンと護民官ピートの開発にかかる。完成してもうすぐ未来に帰らなければならないダンはジョンにこの製品の会社の経営をやってもらう。社名をアラディンにしてもらう。

 

ダンはタクシーで昔のダンが抗議に行っているマイルズ宅へこっそり行き、万能フランクとピートを連れて昔のダンが乗ってきた車で立ち去る。そしてリッキイのいるガールスカウトキャンプを訪ねる。リッキイはベルが嫌いで正式な養子ではなかったのでハイニックおばあちゃんのところへ行く。その際、ダンは再び30年の冷凍睡眠に入ること、そして21歳になってまだダンやピートに会いたかったら冷凍睡眠に入るように言い、その時は目覚める前に待っていると伝える。ダンとピートは冷凍睡眠に入りリッキイが目覚める前に起き、出迎える。ダンとリッキイ結婚。めでたしめでたし。

 

<感想>

・なんど人に騙されようとも、なんど痛い目を見ようとも、結局は人を信用しなければ何もできないではないか(291)

・嘘っいうものは、悪用しちゃいけないけど、つかわなきゃならない時もあるんですって(310)

・リッキイのタイムパラドックスに関するダンの説明への返答がなんかよさげだった

 

 

 

 

桐野夏生(2002)『OUT』講談社文庫(単行本は1997)

<あらすじ(ネタバレ)>

 香取雅子43歳、旦那と息子、孤独。城之内邦子30代?太ってるブランド好き借金あり。吾妻ヨシエ50半過ぎ、姑の介護、娘2人、貧しい。山本弥生30代?2人の小さい息子と旦那。佐竹光義40代?クラブと賭博場のオーナー、女を犯しながら殺した過去あり。

 

 4人は弁当工場深夜勤務。職場仲間。弥生の旦那は佐竹の所で夫婦で貯めた500万を使い果たす。給料は家に入れていない。弥生は旦那と喧嘩してみぞおちを殴られる。弥生は旦那をベルトで絞め殺す。弥生は雅子に相談、協力してもらう。ヨシエは娘の修学旅行費を借りてたこともあり協力。雅子の家の風呂場で弥生の旦那の遺体をバラバラにする。そこに旦那に逃げられて借金返済に困ってる邦子が香取を頼って来る。お金のために邦子も参加。

 

  邦子の捨てたところから遺体発見される。邦子は旦那に逃げられたので弥生を借金の保証人にする。雅子が保証人契約を破棄させる。街金の十文字は疑う。佐竹は弥生の旦那に店でのトラブルで暴行し、疑われて逮捕される。十文字は借金の棒引きを餌に邦子からバラバラを聞き出す。雅子は昔、信金に勤めていたが、男女差別と上司とのトラブルにより辞めていた。その頃の雅子をかっこいいと思っていた十文字は遺体バラバラビジネスを雅子に持ちかける。4百万で引き受ける。ヨシエも百万で参加。初老の男を解体。

 

 佐竹は釈放されたが店は潰れ前科がバレる。犯人探しを始める。調査し全てを知り工場の警備員になる。その警備員に惚れた邦子は佐竹の部屋に入り殺される。十文字経由で邦子の遺体が雅子とヨシエに送られる。ヨシエは報酬をもう一人の娘に持ち逃げされて高校の娘の進学のため参加した。雅子は報酬の7百万をロッカーを持ってる同じ工場の日系ブラジル人宮森カズオに預ける。カズオは以前雅子に痴漢未遂、許してもらう。佐竹は弥生を脅し保険金5千万円を奪う。ヨシエの家が火災。

 

 雅子は逃亡するため金をカズオに返してもらいに行く。カズオの抱きしめられて別れる。工場の駐車場で佐竹に捕まる。廃工場に連れて行かれて暴行される。佐竹は昔の事件の時、大きな快楽を感じていた。雅子にも同じもの、それ以上のものを望んで暴行。雅子もそれを理解し受け入れつつあった。しかしポケットに入っていた遺体解体用のメスで佐竹の顔を深く切る。助けようとするも死亡。雅子は5千6百万を手に航空券を買うつもりでどこかへ行く。

 

<感想>

 自暴自棄になってたりお金に困ってたりすると、こんなことに協力しちゃうもんなのかな?深夜の弁当工場勤務かあ、、、。自由になろうとするほ泥沼にはまっていく。解説で松浦さんは、読者がラストの「解放」にカタルシスを得ると言ってるけど、私はラストで主人公が「解放」されたとは感じませんでした。