『冒険』つづき

「唇の捩れた男」

 ワトスンは友人を探しにアヘン窟へでかけると、そこで老人に変装したホームズに出会う。ホームズは事件の捜査中であった。事件の内容は以下の通り。

 ネヴィル・セントクレアは仕事に出かけた。その夫人も、そのあと外出。途中で、アヘン窟のある建物の3階に主人の姿を見かける。驚いた夫人は主人のもとに駆けつけるが、そこには有名な乞食の「いざり」ヒュー・ブーンがいるばかりで、セントクレア氏の姿は無く、衣類だけが残されていた。

 未解決のままホームズとワトスンはセントクレア夫人宅へ行く。そこで、夫人は主人からの手紙が来たことを伝える。ホームズは一晩考え、答えにたどり着き、ワトスンと共にヒュー・ブーンが拘束されている留置場に向かう。寝ているブーンの顔を洗うと、そこにはセントクレア氏の顔があった。セントクレア氏は新聞記者時代、乞食の取材のため自身も変装して乞食になったところ、かなりの収入を得た。そこで、誰にも気づかれないようにこっそり変装して、乞食専門で生計を立てるようになっていった。

 

「青いガーネット」

 ある男が鵞鳥を落とし、それをピータースンが拾う。その鵞鳥の中から青いガーネットが出てくる。ホームズに届ける。その宝石はモーカー伯爵夫人のもので、盗難され、ジョン・ホーナーが容疑者として捕まっていた。

 ホームズは鵞鳥の落とし主を新聞広告で呼び寄せる。代わりの鵞鳥で満足したので盗難とは関係ないと見て、鵞鳥の入手先を聞く。入手先をたどっていくうちに、同じように鵞鳥を探している者に出会う。その者は盗難現場のホテルのボーイ長ジェームズ・ライダーであった。彼が犯人で、宝石を盗んで前科者のホーナーに罪を着せ、姉が商売で育てている鵞鳥に飲ませて運ぼうとしたが、別の鵞鳥と取り違えてしまったのであった。

 

「まだらの紐」

 ヘレン・ストーナー婦人がホームズ宅へ相談に訪れる。双子の姉ジュリアがいて、母は医師(零落した貴族)であるロイロット博士と再婚したがまもなく死亡。母はお金持ちで、娘たちが結婚すればその一部が娘たちのものになる。姉が結婚式近くになって死亡。夜中に叫び声がし、口笛と金物の落ちる音がして、「まだらの紐」という言葉を残し亡くなる。検死の結果、外傷も無く毒も検出されず。ヘレンも婚約、結婚式近くになって自分の寝室の修繕が始まり、姉の寝室で寝るようになる。その夜、口笛を聞いて恐ろしくなり、ホームズ宅を訪れる。

 ホームズとワトスンはロイロット宅に行き(ロイロットは外出中)、姉の寝室を調べる。窓やドアは閉じれば侵入不可能。ただし、部屋には隣の父親の部屋につながる穴があり紐が垂れ下がっている。ロイロット博士の部屋も調査し、ホームズは犯人を捕まえるためワトスンと共に姉の部屋で夜を過ごす。深夜、かすかな音がすると、ホームズはそれをステッキでたたく。まもなく隣の部屋からロイロット博士の悲鳴が聞こえ死亡。ロイロットは蛇で娘を殺害しようとしたところ、たたかれた蛇が戻ってきて逆にかまれる。医学に知識を利用して検出されない毒蛇を使用、噛んだ傷跡も小さいので見逃される。口笛は蛇を呼び戻すため、金物の音は蛇を金庫の中にしまう音であった。

 

「花嫁失踪事件」

 セントサイモン卿は結婚式の披露宴の中、花嫁のハティ・ドーランが失踪し、ホームズに相談。結婚式の途中、花嫁は花束を落とし、男が拾って渡す。その時から、花嫁の様子が少しおかしくなる。レストレード警部はセントサイモンの元交際相手フローラ・ミラーを疑い捜査し、池から花嫁の衣装を探し出し、そのポケットから花嫁を誘い出す手紙を発見。ホームズはその裏のホテルの代金のメモを見て花嫁の居所を見つける。ハティはアメリカにいたころフランクという青年と交際していたが、殺害されたとの記事が出て、あきらめ結婚しようとしていたところ式場でフランクに再会し、フランクに連れられ今回の失踪劇にいたる。

 

「ぶな屋敷」

 ヴァイオレット・ハンター婦人は奇妙な家の家庭教師を受けていいものか迷いホームズに相談。髪を切ることや、こちらの用意した服を着ることを要求する家だった。

 家庭教師に行き、そこで窓の外の謎の男や、恐ろしい犬、離れの鍵がかかった棟などがあった。ある日、鍵が開いていて中に入ると、閉じたドアの部屋の中に人の気配。怖くて逃げたところ、普段は気さくな主人ルーカッスルに捕まり脅される。ホームズに再び相談。

 ホームズとワトスンはその家に行き、部屋のドアを開けるが、そこには誰もいなかった。そこで主人に見つかり、主人はホームズらを襲わせようと犬を放したところ、逆に襲われ瀕死となる。

 部屋に閉じ込められていたのは娘アリスで、窓の外の男は恋人のファウラー。閉じ込めた動機は娘の財産をとられないためであった。ハンターさんは娘の代役を演じさせられていた。部屋にいなかったのは、ファウラーがアリスの味方である使用人のおかみさんとつながり、主人が留守のとき梯子を用意させて、部屋の天窓から救出したのである。