コナン・ドイル延原謙訳『四つの署名』新潮文庫

ネタバレあらすじ

 

 ワトスンとホームズがおしゃべりしているところへ、おかみのハドスン夫人がモースタン嬢の面会申し出を伝える。

 モースタン嬢が事件について話す。父モースタン大尉はアンダマン島で囚人警備隊の将校をしていた。母は早くになくなる。モースタンは本国の寄宿学校で一人暮らし。父が休暇で帰ってくるが失踪。父の友人のジョン・ショルトー少佐に尋ねるも不明。その後、モースタンはフォレスター夫人の家庭教師となる。新聞広告にモースタンの現住所が知りたいとの広告。知らせると毎年、匿名住所不明の者から真珠が届くようになる。そして、今日、二人の友人を同伴して会いに来るようにとの手紙を受け取ったので相談に参ったとのこと。

 

 ワトスン、ホームズ、モースタンは指定された場所へ向かう。その際、モースタンは父の残した書類をホームズに渡す。そこには、建物内部の図面と「四つの署名ージョナサン・スモール、マホメット・シン、アブズラ・カーン、ドスト・アクバル」とある。指定された場所に到着すると、馬車に乗せられてジョン・ショルトーの息子サディアス・ショルトー宅に連れて行かれる。

 

 サディアスは三人に話を聞かせる。病床の父はサディアスと双子の兄バーソロミューに向かって次のように話した。父ショルトー少佐とモースタン大尉はひょんなことからインドにいるとき莫大な財宝を手に入れる。父は一足先に財宝を持って帰国。父は木の義足をつけた男をひどく恐れ、人違いでピストルを撃つ。ある日、手紙を受け取ってから体調が悪化し床に伏すようになる。モースタン大尉が休暇で帰国した際、父宅を訪れ財宝の分配について話し合うが、口論となり、元々心臓が悪かったモースタン大尉は倒れて財宝の箱に頭をぶつけて亡くなったとのこと。自分が疑われること、財宝のことが公になること、召使ラル・チャウダーの勧めもあって隠蔽。その賠償として自分が死んだらモースタン大尉の分を子に分配するよう息子たちに言う。財宝のありかを伝えようとしたときに、窓に不審な影を認めて叫び、こと切れる。

 

 財宝を探し続け、ついに兄は屋根裏にそれを見つける。その分け前を得るために三人は兄の住むポンディシェリー荘に向かうが、そこで兄が殺害されているのを発見。財宝も盗まれる。ホームズの推理。ドアと窓には内側から鍵がかかっている。窓にはドロの足跡、室内には木の義足の足跡。部屋の隅にロープ。天井には穴があり屋根に出られる天窓とつながっている。屋根裏には小さな足跡。木の義足の男には身軽で小柄な共犯者がいて、そいつが屋根から侵入し、窓からロープをたらして犯行が行われたと推測。犯人の一人は強い臭いのするクレオソートに足を突っ込む。バーソロミューは毒矢で殺害される。ジョーンズ刑事到着。サディアスを逮捕する。ホームズは木の義足男ジョナサン・スモールとその共犯者が犯人だと伝えるが無視される。

 

 ワトスンはモースタン嬢を送りと届けて、犬のトビイをつれて再びポンディシェリー荘に戻ってくる。ホームズとワトスンはトビイとともに犯人を追跡する。その途中、ワトスンの犯人に関する質問にホームズが答える。ショルトーは囚人警備隊の将校だった。一人で財宝を持って帰国。白人の木の義足の男を人違いで撃つ。四つの署名の紙切れのうち白人の名前はジョナサン・スモール。自分で財宝を持って帰らなかったことから囚人。脱走してショルトー少佐に手紙を出し、復讐を図ったが、警備が厳重で果たせず今回の件にいたったと推測。トビイは二人を河岸まで連れてくる。ホームズは近く貸し船屋でおかみに話を聞く。それによると、主人は木の義足の男に頼まれてオーロラという汽艇を出したまま帰ってきていないとのこと。

 

 ホームズらはいったん帰宅して休み、浮浪少年たちからなるBaker Street Irregularsに河岸を捜索させるが成果なし。汽艇を必要なときにすぐ使えて、隠せる場所は船の修理工場だと考え、ホームズは老船員に変装して自ら捜索し発見。ジョーンズ刑事に協力してもらい、高速船を出して彼らが逃亡するのを待ち構える。高速船同士の追走劇の末、共犯者の黒人の小男は毒矢を吹きかけたところを銃殺、木の義足男ジョナサン・スモールは逮捕。ワトスンは財宝をモースタン嬢に届けるが、中は空っぽ。スモールがテムズ河に捨てていた。財宝なくなった事で、これまでためらっていたワトスンはモースタン嬢に結婚を申し込み承諾される。

 

 ジョナサン・スモールの話。インドで最初は兵隊をしていたがガンジスでワニに足を食われて、その後植民地経営の畑で監督の仕事をしていた。インドで反乱が起こりスモールらイギリス側は城塞に集まり身を守っていた。門番をしていたとき、四つの署名の残りの三人から、王族の召使アクメが反乱から守るため城塞に財宝を隠しに来るところを始末して、財宝を奪おうともちかけられ受け入れる。アクメは財宝を隠すための道案内として、アクバルに事情をうちあけていた。アクメは殺され、財宝は隠され、安全になってから掘り返し四人で分配することを示した「四つの署名」が作成された。しかし、アクメ殺害が明らかとなり四人は囚人となる。囚人将校だったショルトーはギャンブルで借金がたまっていた。自由になりたいスモールは三人と相談して、財宝の一部をショルトーらにも分配することと引き換えに、脱走の手助けをするという条件をのませて、財宝のありかを教える。ショルトー少佐は裏切り一人で財宝を持ち帰る。スモールは復讐を決意し、現地人のトンガを仲間にして脱走する。息子のバーソロミューを殺したのは本意ではなく、トンガの暴走だったことを伝える。

 スモールが明らかにしなかった内部の共犯者は執事のラル・ラオであったとホームズは推測。